ジューン・ブライド−小さなマリーチの夢−

*この話を読む前に。

この話は創作「赤いピリオド」のマリーチの5歳の時に見た夢の話です。
あくまでも5歳のマリーチの見た夢の話ですのでマリーチ自身リィンの本性は未だ知りません。
夢オチですので成長したリィンとマリーチの容姿、若干違います。

シーナの町にあるロザリア孤児院、現院長の母親が設立したガルディアの中でも比較的古い孤児院だ。

この孤児院には生後間もない赤子から上は住み込みで働く前の13歳までの子供たちが生活を共にしている。
獣人の里の前で迷子になりリィンに保護された5歳の漆黒の髪の女の子、マリーチも赤子の時にこの前に捨てられここで生活している。

孤児院の中では言葉が喋れる子供たちが自分達の夢を次々と語っていた。
兵士になりたい者、職人になりたい者、お金持ちになりたい者、と色々。
マリーチが自分の夢を言う番になった途端、他の孤児達はマリーチを見下したようなまなざしで見はじめた。
「大きくなったらリィンおにいちゃんのおよめさんになりたい。」
マリーチは大きくなったらリィンのお嫁さんになりたい、といった途端・・・どこからかマリーチに対して物をぶつけだした。
それも3ヶ月前にリィンが誤って刀傷をつけた右肩を集中的に。
この施設にはある程度大きくなってから来た者も多くマリーチの名字を知って悪い噂を流していじめている。
「バーカ!レイプで生まれ捨てられた子供の分際で結婚なんて出来ねぇよ。それにあいつの本性はな・・・!」
特にマリーチに対して一番あたっているのは茶髪のそばかす少年ジーク。
マリーチが迷子になった原因もジークの執拗な嫌がらせ。
3ヶ月前、リィンに散々痛めつけられても未だに反省の色はない様子だ。

今日はリィンがマリーチに会いに来る3ヶ月に一度の約束の日。
獣人の里から丁度リィンは施設の中に入りマリーチのいる部屋にやって来た。

「あのガキ・・・散々痛めつけても懲りていないな。」
その光景を見たリィンは素早くジークの背後に回りヘルブリードを今にも鞘から引き抜こうとしていた。

ジークの背後にリィンが睨み付けて立ってるのを目撃した子分は顔を青ざめていた。
「ア、アニキ!背後に・・・背後に・・・剣を持ったあいつが睨んでる・・・。」

子分の声を聞いてジークが振り向くと・・・
殺し屋の顔をしたリィンがヘルブリードを鞘から殆ど抜き出していた。
リィンの形相を見たジークは恐怖におののきマリーチを苛めるのをやめ自分の部屋に逃げていった。

「おにい・・・ちゃん?ほんとうにきてくれたの。」
マリーチの問いにリィンは首を縦に振った。
マリーチの目線にまで背をかがんで。
「約束、だろ。肩の傷が完全に癒えるオレが3ヶ月に一度会いに来るって。」
それを聞いたマリーチは泣き出してリィンの腰に抱きついてしまった。
マリーチの涙と泣き声はリィンが持つ邪悪な心を一時的に失わせてしまう。
そのためかリィンはマリーチに対して甘く優しくなっている。
リィンはマリーチをなだめると数時間一緒に遊び食事も施設の中で取った。

夜になり、幼いマリーチは疲れ果てて眠りについた。
−大きくなったらリィンお兄ちゃんのお嫁さんになるね−
マリーチは寝言でそう呟いていた。

マリーチが眠り獣人の里に帰ろうとしていたリィンはマリーチのその寝言を聞いてしまった。
リィンは一瞬とまどった。
リィンの故郷・獣人の里は殆ど早婚だが異端児で殺し屋のリィンに言い寄る異性はいない。
マリーチはリィンの本性を知らぬが、ただ一人無邪気に接し彼を慕っている。
それを知ってか知らぬかマリーチを起こさないように髪を優しく撫で小さな声で囁いた。
「マリーチが大きく・・・18になったらな。」
リィンはそう言うと獣人の里へと帰っていった。

小さなマリーチの見る夢の中・・・

紫陽花の咲く6の月、シーナの町にある小さな教会の中。

18歳に成長したマリーチは美少女になり漆黒の髪は腰の辺りまであるかなり長い髪。
身長はさほど大きくはないが少しだけ丸みを帯びた体になっている。
腰まである長い髪は後頭部でお団子頭にまとめられ、白と淡いピンクの花の形をした髪飾りをつけ淡いピンクのベールをかぶっている。
ウエディング・ドレスはリィンが誤ってつけた肩の刀傷が完全に消えたのか少しだけ肩をだしちょうちん袖でベールと同じ淡いピンク色。
バージンロードをただ一人で歩く花嫁姿のマリーチの目の前にはタキシードを着た180cm以上ある20代後半の男性がマリーチに優しく微笑みかけている。
男性の髪と瞳はオレンジに限りなく近い金色で髪は短く体格は武術で鍛えられたらしく均整の取れた体格。
顔は良く見てみると大人の男性に成長したリィンじゃないか。
「リィンお兄ちゃん・・・。」
夢の中のマリーチは未だにリィンの事をお兄ちゃん、と呼んでいた。
それを聞いたリィンは少し怒り背を少しかがみ、リィン自身の額をマリーチの額にくっつけていった。
「こら、お兄ちゃんはやめろ。せっかく夫婦になるのにそれはないだろ。」 それを聞いたマリーチは少し戸惑い恥じらいながら・・・
「それじゃあ・・・リィンさん。」
マリーチが初めてお兄ちゃんと呼ばずリィンさんと呼んだ事に慣れていないリィンは一瞬戸惑ったが再び背をかがみマリーチの額に口付けをした。

教会の中には二人の結婚を祝福するものが誰もいない。
リィンは孤独の身、マリーチも孤児だが孤児院のいた誰もがマリーチが結婚するとは思わなかったのだろう。

お互いが誓いの言葉を交わし指輪を互いにつけるとリィンはマリーチをお姫様抱っこで担ぎ上げ唇に口付けを交わした。

リィンもマリーチもとても幸せそうな顔をしていた。

だが、ガルディアの法律上、女性は17歳にならないと結婚できない為、マリーチが本当に夢を叶えられるのは先の話・・・。

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